そして誰もいなくなった。

書評、エロゲ―の批評等しています。感想、考察は基本ネタばれになります。閲覧にご注意ください。

<<書評>> ‐ライトノベル‐ 「なれる!SE 2週間でわかる?SE入門」

 

なれる!SE 2週間でわかる?SE入門 (電撃文庫)

なれる!SE 2週間でわかる?SE入門 (電撃文庫)

 

 

後にも先にも、好きなライトノベルってなんですか?って聞かれたら、「なれるSE!」と答えつづけると思います。

 

最低でも3回ぐらいは、1~13巻までは読み返しています。何度読み返しても、新鮮なおもしろさがあって、せっかくだからがっつり書評を書いてみようと思い立ち、また1巻から読み直しました。16巻まで各巻、書評を書くつもりなので、おもしろかったなー的感傷を共有できたら幸いです。<<ネタばれ注意>>

 

 

 

◆ レイヤー1 ◆

 

 

大学三回生の桜坂工兵は、就職活動の時期を迎えていた。

同期の仲間は次々と内定を受ける中、はじめての就職活動の慢心もあってか、お祈り状態が続き、精神的に追い詰められていた。企業の新卒採用がひと段落ついたとき、工兵の内定数は0だった。

それでも、めげずに就職サイトを巡回していると、「スルガシステム」というIT企業が眼にとまった。画面をスクロールしていくと、募集要項の下に書かれているキャッチフレーズに工兵のこころが奪われることになる。

 

         「まだ見ぬ君の可能性を求めて――」 

 

お祈り状態が続き、実社会から人格を否定された気になっていた工兵には、自分に可能性があるならば、その可能性を見てみたいと思い、スルガシステムの応募にエントリーした。

 

 

                ◇◇◇◇◇

 

 

根っこの部分から、向上心が高くて、そりゃこういう人は成長するだろうな、と感じます。「早く定時にならないかな~」と心の片隅に思っている人より、断然、工兵みたいな人の方が、成果をもたらすに決まっています。この意識の時点で、成功への道が確約されていたといっても過言ではないのかも知れません。

 

 

                ◇◇◇◇◇

 

 

無事?スルガシステムに入社した工兵は、研修プログラムがないので、OJTでビジネスマナー、仕事のやりかたを学ぶことになった。藤崎は室見立華にOJTのコーチング担当をお願いしたが、こんなド素人に教えている暇はないと、室見は反発する。

が、藤崎は「室見さんもそろそろ中堅だし、人を使うことを覚えていってほしいんだ。仕事を幅をひろげるためにもね。それにネットワーク系の仕事できる人増やした方が、検証関連の予算もとおりやすいでしょ?ほら、トラフィックジェネレーター買う件とか」

と、室見にも利益がある話なんだ、と上手く丸めこむ。結果、駄目押しされた格好で室見はしぶしぶOJT担当を引き受けることになった。

 

 

                ◇◇◇◇◇

 

 

藤崎さんも、やさしそうな顔して、なかなかに裏がある(笑)

実社会にも、字面通りの意味で、やさしい人なんていないと思います。みんなどこかしらやさしそうな顔をしながらも、腹に隠した冷静な目をもっています。

 

 

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◆レイヤー2◆

 

 

 

とりあえず、雑用しか仕事が作れないので、室見はコピー取りを指示するが、採用担当から事前に受けていた説明と現状の職場環境とのギャップにショックを受けた工兵は、室見の指示を聞いていなかった。その様子に頭にきた室見は、ドライバーを取り上げ、工兵の脳天に突き刺した。

 

「痛い!何するんですか!」

 

 

                ◇◇◇◇◇

 

 

毎度おなじみのシーン(笑)

瞬間沸騰湯沸かし器のように激昂する工兵には、いつも笑わされます。

 

 

                ◇◇◇◇◇

 

 

出勤二日目の朝、室見に新たなタスクが舞い込んできた。ただでさえ、OJTも含めてぎりぎりの稼働を割いている室見にとっては、とても捌ききれないので、工兵にこのタスクをこなすように指示し、仕事を振った。

当然、ITの基礎のない工兵は、無味乾燥の文字列にどこから手をつければいいのかすら分からない。どうしたらいいのかまったく分からないので、とりあえず、ネットに落ちていたコンフィグを拾って、反抗の意味も込めて適当にでっち上げた。(別にこれでも間違いというわけではなさそうだし、とりあえず作りさえすれば、レビューが貰えるだろうという、期待を込めて。)

が、コピペだと簡単に見抜いた室見は、「サンプルをコピーしただけだから分かりません、とでもお客さんに言うつもり?(障害があったときに、どの部分がおかしくて、どのくらい時間がかかるのかが分からないとお客さんに説明するのか?)」と叱責する。

そしてもう一度、コンフィグを一から作りなおせと工兵に指示した。

 

 

                ◇◇◇◇◇

 

わたしがゆとり世代だからかどうかは分からないですが、この「仕事は盗んで覚えろ!」みたいな根性論には疑問を感じます。教える手間が面倒って・・・。たいして時間もかからないんだったら、会社全体の効率を考えると、だれかに聞いて、時間当たり付加価値を上げた方がいいのではと考えたりもします。

聞いたときに、「そこは勉強になるから、1回調べて」と言われるようなものは、確かに自分で調べた方が、体系的に理解できることが多いですが(自分で調べろ!はどういう趣旨で言ってるのか分からないですし、そして相手に失礼です。)、ざっと調べてみても分からないときは、上司に聞きに行った方が社会人としての最適解だと私は思いますね。

 

 

                ◇◇◇◇◇ 

 

 

放心状態で、コンフィグを一から作成する工兵。とても今日中には終わりそうになく、終電が近づいていることもあって、今日は帰らしてくださいと室見に打診するが、仕事が終わっていないなら帰るなと、室見は取り入ってくれない。頭にきた工兵は、こんな会社ウンザリだ、と室見を押し入って無理やりにでも帰ろうとしたとき、カモメがやってきて、今日はもう二人とも帰りなさいと、険悪な雰囲気の二人の間を取り持ってくれた。

自宅に帰った工兵は、虚仮にされたまま会社を辞めるのは悔しいので、一度室見を見返してから、会社に辞表を叩きつけてやろうと決心する。夜中から朝方にかけて、コンフィグをセンテンスごとに意味を調べて、ノートに書きつけていった。調べられる範囲で調べつくし、自信をもって朝を迎えた。

とりあえず、社会人的なマナーとして昨日の無礼を謝ろうとすると、室見の方が先に

「ごめん」

「昨日は悪かったわ、新人相手に無茶言いすぎた。ごめん」

と、素直な謝罪を口にしてきたので、工兵は正気を疑った。

いったんコンフィグ作成の件は、室見の方が巻き取ろうとするが、工兵に「仕上げるので、やらせてください」とお願いされたので、「今日の5時までに終わらせる」という条件下で、作業を認めた。

約束の時間までに、一定レベル以上のコンフィグを作成した工兵は、室見にレビューをもらい、手直しを加えた後、実機に投入し無事完成物を作り上げる。

ある程度ひと段落ついたので、工兵に「ちょっと休憩してきなさい」とうながす。厚意に気味悪さを覚えながらも、気持ちが変わらないうちにちょっと休憩してこようと、席から立ち上がった時、廊下からあわてた様子の藤崎が姿を現した。

なんでも、今作った完成物を、もう四台作り上げる必要があるらしい。どうやら社長が、追加で請け負っていた仕事を伝え忘れていたらしい。

「な、な、なんでそんなことになっているんですか。社長はなんて言ってるんです?」

「いや・・・・・・忘れてた。ごめんって」

あえなく工兵の休憩時間は潰れ、めだたく本日も終電帰りとなったのであった。

 

 

                ◇◇◇◇◇

 

 

室見も社長も素直ですね(笑)

謝るべきところは謝る。表面だけ繕うのは、年とともに上手になってくるものだと思っていますが、素直に思ったことを忘れずに、大事にしていきたいですね。

 

 

                

                ◇◇◇◇◇

 

 

続きます。