そして誰もいなくなった。

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<<感想>> 「コンビニ人間」

 

コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)

 

 第55回芥川賞受賞作、「コンビニ人間」読了しました。

 

あらすじとしては、

 

コンビニ店員として働いている年齢36歳独身である古倉恵子は、世間で言われる「普通」という感覚を理解できない女性だった。「なんで結婚しないのか」「なんで就職しないのか」「なんで普通が分からないのか」・・・・・。周囲からはそのような視線を向けられるが、私には合理性を感じなかった。しかしながら、このコンビニには完璧なマニュアルがあるため、普通でない私にとって正しさを教えてくれる唯一の世界だったため、私はこの生活に充足感を覚えていた。

しかし、この生活にも転機が訪れる。久しぶりに集まった地元の友達との再会で、異物である私はいずれ排除されることをそこで予感し、そしてまた、今のこの生活を他の誰も望んでないことを知った時、彼女はある決意をする・・・・・

 

 

 

 

 

 

以下、ネタばれ感想です。

 

 

 

 

 

 

哲学的な話題として、「普通ってなに?」というワードが取り上げられることはよくあると思う。今回「コンビニ人間」を読んで、それについて思索が深まったとかそういう訳ではなく、異なる視点からこの作品を面白いと思った。

本質的に「合理性」を突き詰めていくと普通でなくなることは、本作を読めば納得がいくかと思う。彼女が他の会社に就職しない理由として、「他の仕事は完璧なマニュアルがないので正解が分からないからしない」というスタンスは、一見すると甘えの様にも見えるが、ある意味分からないことはしないというのも合理的な判断とも言える。

その彼女が、一度辞めたコンビニ店員を、誰にも求められていないと分かっていながらもう一度復帰しようとする姿は、不合理であったとしても選択してしまう「普通の人間」の姿だと私は思った。

物語が閉じたあとも生き続ける古倉恵子は、トラブルがあった以前に比べて、より生き生きとしているんじゃないか、そう思わせる爽快な読後感でした。